【10/14(Fri)10:00~】大阪生まれのコットンSeries 販売開始のお知らせ

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こんにちは。シーピースディレクターの阿部です。
2022年もあっという間、10月も半ばにさしかかりました。ここ大阪でも、この数日で気温がぐっと下がり、シーピース社内では慌てて暖房器具を引っ張り出してきたりしています。

さて、2022年10月14日10時より「大阪生まれのコットンSeries」が、いよいよ公式ストアで販売スタートとなります。

大阪生まれのコットン メローショーツ
https://sheepeace.com/i/4520001

大阪生まれのコットン ソフトブラジャー
https://sheepeace.com/i/4525001

この1年、多くの方々に助けられ、私たちのような小さなブランドが、このように意義のある取り組みを成し遂げることが出来たことを、改めて感慨深く思っています。
ちょうど1年前のこと。私たちは、大阪市東淀川区の老舗染工所「飯田繊工」が、災害で倒壊した社屋の跡地を利用してコットンの有機栽培を行っている、ということを知りました。その貴重なコットン「HYCCコットン 」 でインナーを作って欲しいという幸運なお話を頂き、編み立てた生地を初めて手にしたときの、そのやわらかな感触に驚いた気持ちを今でも覚えています。
この生地でインナーを作ったら、 きっと多くの人が喜んでくれる ─
このプロジェクトは、大きな染工所と小さな私たちの、「共通の想い」から始まりました。
今回のものづくりのストーリーを、少しだけ綴らせてください。

2021年10月「コットン畑の視察」

2021年10月、まずは収穫間近の畑を視察させて頂きました。初めて見るコットン畑では、花屋さんで見る綿花より大ぶりのコットンボールが、今にもはち切れそうな程に膨らんでいました。まだ糸にもなっていない、生まれたてのコットンボールの愛らしいこと。これが今回のプロジェクトで、インナーへと生まれ変わるのです。

こちらは同月に収穫された綿花です。敷地内の25mプール位の畑から収穫される綿花は、思った以上に僅かな量でした。

こちらは収穫した綿花から取り除いた“種”の部分。なるほど、綿花の中には種の面積も大きく占めていて、丁寧に取り除く作業を経て、残るのはほんの少しの量なんですね。ちなみにこの種が、翌年また、新たな綿花に育てられます。
さて、この量でインナーは何着できるのでしょうか?
そんな疑問が頭をよぎりました─

2021年10月 「始動」

2021年10月、社内にサンプル室を持つ飯田繊工さんのご協力のもと、 本格的に企画がスタートしました。サンプル作りは前年の収穫で編み立てた生地を使います。
「HYCCコットン」は、畑から収穫する綿花がわずかな量なので、アメリカ産のオーガニックコットン「アルティメイトピマ」原綿と混紡されて作られていました。大量に編み立てると収穫した綿花の比率が下がってしまうので、それでも生地の量は僅かです。サンプル作りは、大切な生地を使わせていただくので、慎重に進めました。

2021年11月 「最初の試練 」

1番はじめに作ったサンプルです。
この「HYCCコットン」は、普段シーピースで使用している生地に比べて少し“ふっくら”しています。これがコットン本来の“天然の毛羽”だそうです。厚みがあって伸びない素材を心地よいインナーにするのは至難の業。ポリウレタン(伸びる繊維)を混紡したら簡単に着心地を良くできるけど、試しに編立てもらうと肌触りは格段に落ちました。オーガニックコットン100%でなければ、やわらかな風合いが消えてしまうのです。 私たちは、“設計 ” でこの難題をクリアするべく、「綺麗に見えるけど着心地がイマイチ」と、「着心地はいいけど見た目がイマイチ」を繰り返し、数か月に渡り苦戦を強いられました。

2022年1月 「仕様確定」

ようやく最終の型に行きついたのが今年の1月の事。課題となっていた点は、細かい修正を繰り返し、 生地とそれ以外の資材との相性を突き詰めていくことで、 何とか求める着心地に着地しました。企画の立ち上がり時点では、ショーツはフローラやテレコリブのようなデザインを予定していましたが、脚ぐりの解放感を再現できる資材が見つからず、最終的にシーピースが得意とする「メロー仕立て」におさまりました。これが、怪我の功名でした。生地の持つやわらかさ、天然の耐性、両方を最大限いかしたショーツが仕上がりました。試練が無ければ、たどり着けなかったカタチです。

2022年2月「ブリングアウト製法染色」

同時に進めていた色決めも、いよいよ確定に向かっていました。「HYCCコットン」は、“ブリングアウト製法”※1 という手法で染色されます。これは、繊維表面のキューティクルと呼ばれる保護膜を傷つけることなく、内部の油分をより多く残すことができる製法で、バリア機能をサポートし、素材が本来持っている原料由来の風合いを引き出します。

※1 工場運用時のCO2排出量を2030年に2020年比5%削減を目指し開発された染色技術。飯田繊工株式会社の年間染色工程をすべて「ブリングアウト製法」に切り替えると、ガソリン自動車で42km走行した際の排出量と同等のCO2が削減できる。(地球10周分)

2022年3月「ヴィジュアル撮影」

3月、大阪府内の某スタジオで「大阪生まれのコットンSeries」のヴィジュアル撮影が行われました。撮影には実際に収穫した綿花をお借りし、真綿に包まれるようなやわらかなイメージを、作り上げてもらいました。
撮影の時、ふと、モデルさんが軽やかに踊り始めた印象的な場面がありました。気持ちよさそうにくるくると踊る彼女の姿を見て、「このインナーを着る人が、こんな風に解放感を感じてくれたらいいな。」と、どきどきした気持ちになりました。撮影とは不思議なもので、その場の空気やお天気、関わる人たちのその時の気持ちから、作られます。誰にも予想のできない、いわば偶然の産物なのです。
無邪気にくるくると踊る様子は、公式Instagramの画像でご覧ください。(動画を撮っておけばよかったですね。)とってもかわいかったですよ。

2022年4月「2度目の試練」

さて、ものづくりはとんとん拍子に進むはず…だったのですが、ここで2度目の試練に直面することになります。
「こんな丁寧な縫製は、出来ないよ。」
縫製を予定していた工場さんに、生産目前で言われた言葉でした。

問題になったのは、ソフトブラジャーのストラップ部分。 僅かな生地を使ったこのプロジェクトは、生産量が少なく、大きなロットでの生産と違い、面倒な仕様は嫌がられてしまうのです。ゴムが直接触れる仕様なら簡単に出来るけど、どうしても、ここはゴムをオーガニックコットンでくるんで作りたい。

マクアケでのプロジェクトも始まり、5月に予定している大丸梅田店ミチカケウェルネスアクション展でのお披露目まで時間がない中、再度、小ロットでもリクエストに応えてくれる縫製工場探しが始まりました。

2022年5月「希望の光」

2022年5月25日~31日に大丸梅田店で行われた「ミチカケウェルネスアクション」で、不安を抱えたまま「大阪生まれのコットンSeries」が初のお披露目となりました。とはいえ、新聞社や雑誌社の方に取材頂いたり、お客様がご来場くださったりと、改めてシーピースのものづくりに自信が持てる機会でした。

そこに、シーピースの生産を担ってくださっている“中村さん”の姿が。

「阿部ちゃん、縫ってくれる工場さんが見つかったよ。」

2022年7月「第3の試練」

企画は生産に向けて、いよいよ佳境に。試作を繰り返して確定した設計を、正式なパターンに仕上げていきます。縫い代の付いた型紙を作り、裁断の準備に入ります。
と、ここで第3の試練が勃発しました。プロジェクトの主役である「HYCCコットン」の編み立てが、コロナウイルスの影響で大幅に遅れているといういうのです。

2022年8月「コロナウイルス感染症」

ようやく生地が出荷されたのが、8月5日のことでした。編み立てられたコットン生地が飯田繊工さんで染色加工され、裁断工場へと出荷されました。この時点で、マクアケで応援購入くださった方々への発送が、予定日に間に合わないことが確定となり、断腸の想いで発送遅延のお知らせをしました。
この頃、生産現場ではコロナウイルス感染症の影響による休業が相次いでいました。裁断、縫製共に遅れが生じるとの連絡を受け、見通しの立たない不安に再び暗雲が立ち込めます。

2022年9月

9月末、待ちに待った商品が納品されました。まずはIvory、Green、terracottaのショーツたちが届きました。コットン畑で見たあの景色がよみがえります。続いてソフトブラジャーも納品されました。育ててくださった飯田繊工の皆さん、企画、紡績、編み立て、染色加工、裁断、縫製に携わってくださった方々、そしてコットンを育んでくれた大地に、感謝と敬意をもってひとつひとつ検数し、まずは応援購入くださったお客様に発送作業を行いました。

少し戻って2022年6月

6月某日、大阪府東淀川区の飯田繊工では、新しいコットンの苗植えが行われました。(あの“種 ” から育った苗です。)

今年は私たちも参加させていただきました。
「大きくなって、また会おうね。」と苗にメッセージを込めて。

最後に。

この度、こうして公式ストアでの販売をスタートするにあたり、改めてこのプロジェクトを振り返り、この一年の物語を綴らせていただきました。今回、このように大きな企業と小さなブランドが一丸となってひとつのプロジェクトを成し得たことは、それ自体が新しい“種”となりました。小さな力でも、手を取り合うことで可能性は無限に拡がることを実感し、多くの学びがありました。

繊維業界は今、環境問題において大きな課題に直面しています。ものを作り出す産業は、必ず環境に負荷をかけます。その中で、負荷を最小限に抑える努力をし、感謝の気持ちで資源を(使わせて)頂くことが今私たちに出来ることだと思っています。丁寧なものづくりは、「ものを大切にしよう。」「ものを長く使おう。」という気持ちをつくり、環境への負荷を減らしながら豊かな心を育てるのではないでしょうか。

使用頻度の高いインナーは、消耗品であるという考え方が少なくありません。アウターに比べ、丁寧な洗濯や手入れも現実問題難しいことかもしれません。だからこそ、洗濯を繰り返しても耐性のあるものを、手放したくなくなる愛着のわく着心地を、私たちは作り続けたいと思います。

このインナーを身に着ける人、このプロジェクトに関わったすべての人達にとって、未来が豊かでありますように。
心より感謝を込めて─

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